本研究は、実践薬学大講座 病院薬学研究室により実施され、研究成果は、すべての脊椎動物種における松果体とそのホルモン生成物、主にメラトニンに関する研究をカバーする査読付きの科学ジャーナルである「Journal of Pineal Research」(掲載時Impact Factor: 6.3)に掲載されました。
研究背景と研究成果のまとめ
パーキンソン病は世界中で数百万人が罹患しており、病気の予防と治療に大きな進展がなければ、その罹患率と有病率は2030年までに30%以上増加する可能性があります。近年、パーキンソン病の新規治療戦略として、睡眠と概日システムを標的とすることに注目されています。
我々は、FDA(米国食品医薬品局)によって集積された個別症例安全性報告のデータベース(FAERS)を用いて、メラトニン受容体作動薬とパーキンソン病との関連性について報告していました(https://doi.org/10.1111/jpi.13002)。しかし、個別症例安全性報告のデータベースの解析では、報告バイアスなどさまざまな研究限界もありました。
そこで、本研究では、リアルワールドデータのひとつとして、近年、数多くの臨床研究にも用いられている保険請求由来のデータベース(DeSCデータベース)を用いて、日本国内で販売されているメラトニン受容体作動薬であるラメルテオンとパーキンソン病との関連性について検証しました。![]()
検証には、暴露前後のシーケンス(順序)に対する対称性を評価する手法であるSequence Symmetry Analysisを用いました。
ラメルテオンの使用とパーキンソン病との間に負の相関が示されました (ASR: 0.959、95% 信頼区間: 0.955-0.964)。層別解析においても45歳から74歳の患者群で、男性、女性ともに同様な関連性を示しました。![]()
黒質におけるドーパミン作動性ニューロンの進行性喪失、α-シヌクレイン(α-syn)からなるレビー小体およびレビー神経突起の形成は、パーキンソン病の主要な病理学的特徴で、ドーパミンニューロンにおけるα-synの蓄積はアポトーシスを誘導し、最終的にパーキンソン病の症状を引き起こします。
先行研究の動物実験では、メラトニン受容体作動薬が、MT1受容体の活性化やPARP阻害により、α-synの凝集を抑制することによって抗パーキンソン作用を示す可能性や、アゴメラチンがPARP1の発現を変化することなく、カスパーゼ3を発現し、アポトーシス関連因子の誘導することにより、パーキンソン症状を示す可能性が示唆されていました。
本研究は、個別症例安全性報告を用いた、ヒトを対象にメラトニン受容体作動薬とパーキンソン病との関連性を評価した我々の先行研究の報告につづく、リアルワールドデータを用いた現時点で唯一の検証報告です。本研究で示されたラメルテオンとパーキンソン病との関連性については、パーキンソン病の新規治療戦略につながることが期待されます。
論文情報
- 雑誌名:Journal of Pineal Research (掲載時Impact Factor: 6.3)
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論文名:Sequence Symmetry Analysis of the Interrelationships Between Ramelteon and Parkinson's Disease.
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著者: Yoshihiro Noguchi, Rikuto Masuda, Tomoaki Yoshimura
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論文URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/jpi.70080
- DOI番号:https://doi.org/10.1111/jpi.70080
- オンライン掲載日:2024年9月14日
- 研究室HP(URL)
病院薬学研究室:https://www.gifu-pu.ac.jp/lab/byoyaku/
