本学の腰塚哲郎教授(感染制御学研究室)が、名古屋大学との共同研究で取り組む「次世代ワクチンモダリティの開発」について、新聞に掲載されました。

中日新聞令和6年4月16日付掲載.pdf

プロジェクトに関するプレスリリースはこちら:https://www.gifu-pu.ac.jp/news/2024/03/-nu-mrna.html

研究の背景とプロジェクトの概要

サイトメガロウイルスは健常者の7割程度に既に感染しているウイルスです。通常は小児期に感染をした後、一生涯、体内に潜伏し続けます。免疫状態が正常であればこのウイルスは病気の原因となりません。しかしながら、臓器移植などにより免疫状態が悪化するとウイルスが増え始め、さまざまな病気を引き起こします。また、妊娠女性がこのウイルスに感染すると、ウイルスが胎児に感染し、流死産やさまざまな障害を引き起こすことが知られています(先天性サイトメガロウイルス感染症)。サイトメガロウイルスの先天性感染を受けた児は300人に一人程度の割合で発生しています。先天性サイトメガロウイルス感染症は頻度の高い先天性感染症の一つであり、ワクチンで防御する必要がある感染症と考えられていますが、感染を防御できるワクチンは未だ実用化されていません。
サイトメガロウイルスの感染メカニズムは複雑であり、感染成立には複数のウイルスタンパク質複合体が関わっています。ワクチンにはこのタンパク質複合体を用いることになりますが、これを試験管内で合成・精製することは技術的ハードルが高く、mRNAを用いて細胞内でウイルスタンパク質複合体を作らせる方が適しています。mRNAワクチンであれば、抗体に加え、T細胞が関わる免疫応答の誘導も期待できます。
今回、私たちはAMEDの支援を受け、先天性サイトメガロウイルス感染症を予防できるワクチンの開発を目指します。Nu-mRNAは、名古屋大学理学部・阿部洋先生らが開発したmRNA技術を基盤としており、副作用の少ないmRNAワクチンになることが期待されます。
本プロジェクトを通して、先天性感染症を減らし、世界に笑顔を増やすことに貢献できると考えています。