概要
パーキンソン病は、黒質ドパミン作動性神経細胞の進行性脱落を主な病理学的特徴とする神経変性疾患です。既存薬のロチゴチン (ドパミン受容体アゴニスト) は症状改善の目的で使用されていますが、黒質ドパミン作動性神経細胞の進行性脱落を抑制する治療に対するニーズは依然として満たされていません (Shtilbans et al., Antioxidants Basel. 2025)。これまでの先行報告により、脳内の鉄の異常蓄積が引き起こす細胞死 (フェロトーシス) が、パーキンソン病の病態に関与する可能性が示唆されています (Zhang et al., Free Radic Biol Med. 2020)。そこで、抗フェロトーシス作用とドパミン受容体アゴニストの二重作用型ハイブリッド化合物 (27e) の開発に成功しました。
本成果は、岐阜薬科大学薬物治療学研究室の村上貴規博士課程学生、大内一輝助教、位田雅俊教授らと、本学の国際交流締結大学である浙江大学薬学院のWenteng Chen准教授らとの国際共同研究として実施され、European Journal of Medicinal Chemistryに公開されました。
結果1
27eはドパミン受容体を極めて強力に活性化しました (ロチゴチンの約10倍)。さらに、ドパミン神経毒を添加した細胞における鉄の増加および、フェロトーシス実行因子である脂質過酸化を抑制することで、抗フェロトーシス作用をもつことを示唆しました。

図1:27eのドパミン受容体アゴニスト作用および抗フェロトーシス作用
(A) 27eのドパミン受容体アゴニスト活性
(B) 27eの鉄に対するキレート作用
(C) 27eの脂質過酸化に対する作用
結果2
ドパミン神経毒誘発性パーキンソン病モデルマウスへの27eの投与は、ドパミン作動性神経細胞の進行性脱落の抑制し、ローターロッド試験において協調運動機能障害を改善しました。
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図2:ドパミン神経毒誘発性パーキンソン病モデルマウスにおける27eの効果
(A, B) 27eの黒質緻密部におけるドパミン神経細胞脱落抑制作用
(C) 27eの協調運動機能に対する評価 (ローターロッド試験)
今後の展望
27eは、ドパミン受容体アゴニスト作用と、抗フェロトーシス作用の二重作用によって神経保護効果を示し、運動症状改善作用を示しました。今後は27eをシード化合物として、PDの創薬基盤技術の確立を目指します。
論文情報
- 雑誌名:European Journal of Medicinal Chemistry
- 論文名:Dual-acting molecular hybrid strategy: A dopamine D2 receptor agonist with synergistic anti-ferroptosis activity for the treatment of Parkinson's disease
- 著者:Qi Zhu, Takanori Murakami, En Chen, Kazuki Ohuchi, Haifeng Li, Kosei Funamoto, Zihan Yan, Hisaka Kurita, Yongping Yu, Masatoshi Inden, Wenteng Chen
- DOI番号:10.1016/j.ejmech.2026.119169.
