香粧品健康学寄附講座の佐藤 伸哉研究員、宮﨑 恵(2022年度卒)、水谷 有紀子特任准教授、井上 紳太郎特任教授と、愛知学院大学、山口大学、愛媛大学との共同研究成果が、Journal of Biological Chemistry誌に掲載されました。

研究成果の概要

皮膚ヒアルロン酸(HA)は、細胞外マトリックスでいったん中間サイズに分解されたのち、局所リンパ節へ移行し、さらに断片化が進みます。以前、井上らは、機能未知のタンパク質HYBIDが、クラスリン依存的に細胞内に取り込まれたHAを、初期エンドゾーム内で分解後、細胞外に分泌することが、最初のHAの中分子化のステップであることを見出しました。これに対し、近年HYBID と構造類似性の高い膜タンパク質のマウスTMEM2が膜結合型ヒアルロニダーゼとしてはたらくことが報告されました。今回、研究グループは、キメラTMEM2やアミノ酸残基置換TMEM2などを詳細に調べ、ヒトTMEM2はマウスTMEM2とは異なり、ヒアルロニダーゼ活性をもたず、むしろHYBIDの発現抑制とHA合成酵素HAS2の発現亢進を介して、高分子HAを蓄積させる方向に制御する因子であること明らかにしました。これにより、ヒトにおける細胞外マトリックス中のHA分解の主役はHYBIDであることが示されました。

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本研究成果のポイント

・HYBIDやTMEM2は、がん増殖・転移、慢性関節リウマチ、変形性関節炎、細胞増殖・分化、寿命、難聴など、多くの病態生理で関与が報告されているが、今回の発見は、TMEM2に関するこれらのアプローチに、マウスモデルではヒトでの役割を類推できない。

・TMEM2は、ヒトではHA分解ではなく、逆に高分子HAを制御的に増加させる因子であることから、今後の研究における作業仮説設定に軌道修正が必要である。

・ヒトTMEM2によるHA関連遺伝子の遺伝子発現調節機能がどのようなメカニズムで行われているのかさらなる研究が必要である。

論文情報

  • 雑誌名:Journal of Biological Chemistry
  • 論文名:Human TMEM2 is not a catalytic hyaluronidase, but a regulator of hyaluronan metabolism via HYBID (KIAA1199/CEMIP) and HAS2 expression
  • 著者:Shinya Sato, Megumi Miyazaki, Shinji Fukuda, Yukiko Mizutani, Yoichi Mizukami, Shigeki Higashiyama, Shintaro Inoue
  • DOI番号:https://doi.org/10.1016/j.jbc.2023.104826

研究室HP

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