3.ジスルフィド化合物の物理・化学・生物学的性質に関する基礎研究
ジスルフィド化合物の物理・化学・生物学的性質に関する基礎研究
1. ジスルフィド基の酸化・還元電位の制御
アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、プリオ ン病など、神経変性疾患は、世界で6000万人以上が罹患しており、今後も増えてい くと考えられています。しかし現在のところ、進行を多少遅らせる程度の薬しかあり ません。また、開発費が莫大である一方、臨床試験の成功率が極めて低いため、研究 から撤退する製薬企業も多くあります。
神経変性疾患の特徴の一つは、異常タンパク質が凝集・蓄積していることです。しか し、体は、何もしていないわけではありません。プロテイン ジスルフィド イソメ ラーゼ(Protein Disulfide Isomerase, PDI)という、小胞体に存在し、タンパク質を正 しい形に折りたたむ酵素の発現が上昇します。現在、折りたたむPDI、ほどくPDI、 ほどいて折りたたむPDIなど20種類以上のPDIが発見されていますが、全てのPDIの 活性部位はシスチン(つまりジスルフィド基)です。このジスルフィド基が電位(電 子の入り易さ、電子の取れ易さ)を変えることによって、役割を変えているとわかっ ているのですが、同じシスチンであるのに、どうして電位が変わるのかが明らかと なっておらず、神経変性疾患の薬となる可能性をもつPDI模倣体もできていません。
そこで、当研究室では、様々なジスルフィド化合物を合成し、何が電位に影響するの かを研究しています。
参考文献
J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 13791-13805
Org. Lett. 2011, 13, 2837-2839
2. ジスルフィド化合物の生理活性
研究「1 ジスルフィド基の酸化・還元電位の制御」で、ジスルフィド基の電位(電 子の入り易さ、電子の取れ易さ)が異なる化合物を合成し、研究を行ってきた。しか し、ジスルフィド基の電位は、神経変性疾患だけに関係があるのではありません。硫 黄元素を含んだアミノ酸は、アミノ酸の中でも酸化されやすく、活性酸素との反応や、 タンパク質の変性などとも関わっています。さらには、CXXC構造と呼ばれるジスル フィド基が、細胞死の制御、DNA結合タンパク質の機能調節、金属イオンとの相互 作用など、多様な生命現象に関与しています。 そこで、せっかく電位や構造が異なるジルフィド化合物を合成したのならば、細胞内 でどのように振舞うのか、様々なジスルフィド化合物の生理活性について研究してい ます。
3. ジスルフィド化合物の物理化学的性質
参考文献
Org. Biomol. Chem. 2023, 21, 65-68
