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生命薬学大講座

生化学研究室 
Biochemistry

教授 原 明 准教授 松永俊之 助教 遠藤智史
Professor
Akira Hara
Associate Professor
Toshiyuki Matsunaga
Assistant Professor
Satoshi Endo
hara@ matsunagat@ sendo@
※メールアドレスは @ 以下に gifu-pu.ac.jp を付加してください.
 
生化学教室は、昭和27年(故)伊藤四十二教授(元静岡薬大学長)が初代教授として大学院薬学研究科生化学特論を開講されたことに始まりました。 昭和29年に(故)高取吉太郎教授のもと、佐久間禮三郎助教授(元本学学長)、山田保雄助手の教員で教室が発足しました。その後、(故)石黒伊三雄、澤田英夫,現在の原 明の各教授に引継がれ、今日至っています。 また平成19年から学内組織改革により、生命薬学大講座 生化学研究室となりました。教室設置とともに、担癌動物における代謝、代謝拮抗物質及び微量生理物質などの研究が開始されました。 石黒教授によりトリプトファン代謝に関する研究、ミクロソームにおける水酸化反応機構などについて研究が行われ、澤田教授により酸性ホスファターゼの免疫化学的研究とともに、薬物代謝酵素の研究が開始され、 多くの新しい酵素(カルボニル還元酵素、アルデヒド還元酵素、多環状芳香族炭化水素を代謝するジヒドロジオール脱水素酵素など)が発見されてきました。機能および構造解析研究により、これらの薬物・異物の代謝酵素は、 本来、生体成分のヒドロキシステロイド、単糖、プロスタグランジン及びビタミンAの代謝酵素であること、ならびに構造的に4種類のタンパク質ファミリーに分類されることが明らかになりました。 このうち、ヒトのヒドロキシステロイド脱水素酵素は、黄体ホルモンと神経ステロイドの不活性化だけでなく、男性ホルモンの活性型から女性ホルモン受容体βのリガンドになるステロイドの生合成にも関与することが示され、 その遺伝的多型の研究も行ってきました。また、糖代謝酵素の1種は糖尿病合併症との関連が示唆されています。一方では、これらの酵素のいくつかが多環状芳香族炭化水素による発癌やキノン毒性に関与することが見出されてきました。 したがって、これらの酵素を標的とする内分泌・代謝疾患の治療薬の開発を目指して、各酵素の高次構造に基づく阻害剤の探索、試験動物における対応酵素の研究、疾患または毒性発現機構の解明へと展開してきました。 さらに、最近、酸化リポタンパク質を中心として脂質代謝と動脈硬化・糖尿病・炎症性疾患の発症に関する研究に取り組んでいます。

現在の研究を以下に概説します。
1.動脈硬化・糖尿病・炎症性疾患と脂質代謝に関する研究 
日本人の死因の上位である心疾患、脳血管疾患は、いわゆる「動脈硬化性疾患」です。動脈硬化は高コレステロール血症、高血圧症、糖尿病、喫煙、遺伝、加齢をはじめとして多くの要因が関係しています。 動脈硬化の指標として、善玉リポタンパク(HDL)の減少と悪玉リポタンパク(LDL)の増加が一般的に知られています。近年の研究により血液中で増加した活性酸素等によって酸化されたLDLが動脈硬化発症の危険因子であることが明らかになりましたが、 動脈硬化を抑制する働きがあるHDLの酸化体の働きについてはほとんど知られていません。本研究室では、「HDLが酸化されたら動脈硬化を引き起こすかどうか」を研究し、これまでに、酸化HDLが狭心症や糖尿病患者の血液中に高値に存在することや、 酸化LDLとは違って血管内皮細胞層に主に局在することが明らかになったので、酸化HDLによる血管内皮細胞への直接的な効果について研究を行っています。また、炎症性疾患や糖尿病発症における脂質代謝の役割についても研究しています。
2.薬物、神経ステロイド、糖などの酸化還元酵素の構造生物学的研究
タンパク質はあらゆる生命活動をになう機能性分子です。その働きはそれぞれのタンパク質が固有の立体構造を保持することで発揮され、タンパク質の立体構造はアミノ酸配列によって決定されます。 遺伝学、構造生物学における様々な機構を分子レベルで理解し、タンパク質を標的とする医薬品を開発するためには、そこで働くタンパク質の立体構造の知識が重要です。 更に、人工的にタンパク質のアミノ酸配列を変えたときに起こる構造や機能の変化を見ることによって、作用機序を直接理解することもできます。上記の各種酵素について、 癌や内分泌・代謝疾患の発症・進展との関連および異物による毒性発現機序に関する研究とともに、それらの高次構造を明らかにし、作用機序の解明および医薬品開発を目指しています。
図  酸化リポタンパクによる動脈硬化進展系の概念(右図、挿入写真:ヒト動脈硬化巣における酸化HDLの局在と立体構造が明らかなった酵素(左図:a単量体、b二量体、cとd四量体)
研究課題
  1. 動脈硬化発症機序における酸化HDLの意義の解明
  2. キノン体による炎症機序の解明
  3. ステロイドおよび糖代謝酵素を標的とする医薬品開発の基礎的研究
  4. 癌増殖におけるカルボニル化合物代謝酵素の意義の解明
最近の研究成果
1. Involvement of an aldo-keto reductase (AKR1C3) in redox cycling of 9,10-phenanthrenequinone leading to apoptosis in human endothelial cells. Chem. Biol. Interact., 181, 52-60 (2009).
2. Structure-guided design, synthesis and evaluation of salicylic acid-based inhibitors targeting a selectivity pocket in the active site of human 20alpha -hydroxysteroid dehydrogenase (AKR1C1). J. Med. Chem., 52, 3259-3264 (2009).
3. Kinetic studies of AKR1B10, human aldose reductase-like protein: Endogenous substrates and inhibition by steroids. Arch. Biochem. Biophys., 487, 1-9 (2009).
4. Determinants of inhibitor binding to human 20alpha-hydroxysteroid dehydrogenase: Crystal structure of the enzyme in ternary complex with coenzyme and the potent inhibitor 3,5-dichlorosalicylic acid. J. Med. Chem., 51, 4844-4848 (2008).