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専門教育大講座
放射化学研究室
Radiochemistry
   
助教 立松憲次郎
Assistant Professor
Kenjiro Tatematsu
tateken@
※メールアドレスは @ 以下に gifu-pu.ac.jp を付加してください.
 
 本研究室は、三田洞校舎に移転した昭和40年にそれまで講義のみが行われていた放射化学が研究室として豊吉一美助教授を主任として発足しました。次いで昭和47年から製薬研究所・ラジオアイソトープ(RI)研究施設、平成2年からは生物薬学研究所・放射化学研究室へと組織替えが行われ、現在に至っています。また平成19年から学内組織改革により、専門教育大講座 放射化学研究室となりました。その間、2つのRI施設の建設、科学技術庁(現在の文部科学省)への許可申請などを含む施設の維持・管理、放射線安全管理などを現場で中心的に行っています。研究テーマは、薬・毒物の安全性を毒性学的視点から、化学物質の生体内運命、薬物動態及び毒性「ADME/Tox:アドメトックス試験」の考え方を中心に解明する目的で、同位体による標識と関連化合物の合成から始まるトレーサ法、変異原性試験及び発がん性試験など、一貫して外部機関と協力しながら動物とヒトを対象に行ってきました。
 生活習慣の中で喫煙と食生活ががんの発生とその予防に最も重要な因子であることは良く知られています。環境発がん物質のほとんどは前駆発がん物質であり、生体内で第1相と第2相代謝酵素(cytochrome P450 (CYP)、抱合酵素など)により代謝的に活性化または不活性化されます。図示しましたように、発がんイニシエーション期における発がん物質の活性化の増強と不活性化の抑制は発がんを促進し、逆に活性化の抑制と不活性化の増強は発がんを予防します。したがって、環境中の修飾因子による発がん調節の作用機構の1つとして、これらの代謝(不)活性化酵素の活性を修飾することが重要であると考えられます。現在、本研究室では「生活習慣による発がん修飾作用における代謝活性化の役割」を主研究テーマとして、食品と嗜好品中の各種発がん修飾因子のCYP分子種、代謝酵素活性、臓器上清共存下の発がん物質の変異原活性(変異原的活性化)などに対する修飾作用を研究しています。
シガレット煙 (CS)、アルコール、isothiocyanate(ITC; ワサビ、和ガラシ、ブロッコリーなどの十字花科野菜の有効成分)及びcurcumin(ウコン、ターメリック)は化学発がんモデルにおいて多くの標的臓器に対して修飾作用を示し、ヒトのがんの化学予防を考慮する上でいずれも重要な因子であります。 イニシエーション期にCSを実験動物に暴露すると、肝CYP1A1と1A2発現とこれらのCYP分子種により代謝活性化されるbenzp[a]pyreneとheterocyclic amine(HCA)の変異原的活性化が特異的に促進され、また不活性化にのみ関わる抱合酵素であるUDP-glucuronyltransferase (UDPGT)活性も上昇するという、CSは発がんに対して両面性を示しました。実際に、UDPGTの基質とならないHCA, MeIQxによる実験肝発がんモデルにおいてCSは促進作用を示すのに対して、CYP1A1と1A2では活性化されず、UDPGTの基質となるN-ニトロソ化合物(NOC)による膵発がんモデルにおいては化学予防作用を示しました。 アルコールの摂取は、ヒトも含めて肝CYP2E1を特異的に誘導し、そして環境性のN-nitrosodiethylamine誘発のラット食道発がんを強く促進しますが、CYP2B1/2により活性化されるN-nitorosomethylbenzylamine (NMBA)誘発のそれはわずかにしか促進しません。代表的HCAであるPhIP誘発のラット乳腺発がんのITCによる抑制作用においては、肝CYP1A2発現の誘導とPhIPの変異原的活性化が抑制されるとともに、UDPGT活性が上昇するという、dual mechanism作用をITCは示しました。そして、curcuminはNMBA誘発のラット食道発がんを抑制しますが、curcuminは肝における代謝(不)活性化には全く影響せず、食道と胃におけるCYP2B1と2E1発現とNMBAを含むNOCの変異原的活性化を抑制しました。逆に、curcuminは大腸におけるCYP2B1発現とNOCの代謝活性化を上昇させることから、CYP2B1により活性化されるNOC誘発の大腸発がんに対しては促進的に作用する可能性を示唆することができました。

 

図. 環境性発がん物質の代謝(不)活性化と発がん修飾作用
研究課題
  1. 薬・毒物の生体内運命に関する研究
  2. 食品成分による化学予防作用と代謝活性化の修飾作用に関する研究
  3. 喫煙、飲酒による発がんと代謝活性化の修飾作用に関する研究
  4. 食用油中の微量成分による有害作用機構に関する研究
最近の研究成果
  1. Cigarette smoking,, metabolic activation and carcinogenesis, Current Drug Metabolism, 5, 363-373 (2004).
  2. The role of metabolic activation in modification of heterocyclic amine- or N-nitrosamine-induced carcinogenesis in rodents, Carcinogenesis and Modification of Carcinogenesis (T. Tanaka and H. Tsuda, eds.), pp57-96, Research Sighpost, Kerala (2005).
  3. Effects of -naphthyl isothiocyanate and a heterocyclic amine, PhIP, on cytochrome P-450, mutagenic activation of various carcinogens and glucuronidation in rat liver, Mutagenesis, 20, 15-22 (2005).
  4. Modification by curcumin of mutagenic activation of carcinogenic N-nitrosamines by extrahepatic cytochromes P-450 2B1 and 2E1 in rats, Cancer Sci., 97, 896-904 (2006).