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生体機能解析学大講座

分子生物学研究室
Molecular Biology

 

教授 古川昭栄

講師 福光秀文

助教 宗宮仁美

Professor
Shoei Furukawa
Associate Professor
Hidefumi Fukumitsu
Assistant Professor
Hitomi Somiya
 
furukawa@ hfukumi@ somiya@
※メールアドレスは @ 以下に gifu-pu.ac.jp を付加してください.
 
 分子生物学講座は岐阜市制100周年を記念して平成2年10月に創設された生物薬学研究所に新設され,林恭三先生が初代教授に就任されました.林教授は平成6年3月に定年退官され,平成7年4月に古川昭栄が教授に就任し現在に至っています.一貫して神経系に作用する分子,主に神経栄養因子に関する研究を行ってきました.
 神経栄養因子とは,神経細胞の発生,生存,分化を調節する一群の生体内タンパク質の総称です.主な神経栄養因子を対象として,脳における生理的機能の解析,産生調節や細胞内プロセシング機構の検討から,類似活性を持つ低分子化合物の探索・開発およびそれを用いた神経保護,中枢神経の軸索再生などの臨床応用を目的とする研究にまで活発に取組んでいます.
 代表的な研究を以下に概説します.
1. 培養神経幹細胞に及ぼす神経栄養因子の作用:神経幹細胞は複数のbHLH転写因子の影響下に多種多様な神経細胞を生み出します.神経分化はMash1,Math1及びNeuroDによって促進され,Hes1, Hes5で抑制されますが,これらのbHLH転写因子の発現と機能を制御する内在性因子は不明です.そこで脳由来神経栄養因子(BDNF)を検討し,FGF-2存在下で増殖中の神経幹細胞にBDNFを追加しても増殖性は変わらず神経分化にも影響しませんが,Mash1,Math1 mRNAレベルが上昇しました.続いてFGF-2を除去すると, 機能的に神経分化を推進するNeuroD が早期に高レベルで誘導されました.すなわちBDNFはbHLH転写因子の発現を制御して神経分化を促進すると考えられます.
2.大脳皮質神経細胞の性質を決定する内在因子:大脳皮質は6つの神経細胞層から成り,この構造は大脳皮質機能には必須です.しかし各神経細胞が層特異的な性質を獲得する機構は不明です.そこでBDNFの関与を調べるため,13.5日齢のマウス胎仔脳室にBDNFを注入し,さらに神経幹細胞を標識しました.標識細胞を生後に観察すると,BDNFによって本来第IV層を形成するはずの細胞の多くが深層第V-VI層の性質を獲得して同層に移動することがわかりました.抗BDNF抗体を投与すると逆に浅層の神経細胞を形成するようになりました.すなわち大脳皮質神経細胞層の性質を決定する内在性因子をはじめて同定し,それはBDNFであることが分かりました.
3.神経栄養因子様の活性低分子化合物の開発:神経栄養因子は特定の神経細胞に作用して細胞死の抑制,軸索の再生を起こすため,アルツハイマー病などの神経変性疾患に対する治療薬として応用が期待されています.しかしタンパク質であるため生体内で分解されやすく脳移行性にも問題があります.末梢から脳に移行して神経栄養因子の発現・産生を高め,類似の細胞内シグナルをもつ安定な化合物があれば疾患予防や治療に役立つかもしれません.現在植物成分を中心に探索中です.
4. 神経栄養因子の細胞内プロセシングと分泌調節:神経成長因子(NGF)やBDNFなどは,細胞内で合成された後に切断されて低分子となって分泌されますが,近年,切断されていない前駆体もかなり分泌されており,しかも低分子タイプと異なり細胞死を誘導する作用を持つことが明らかとなってきました.そこで,そのような細胞内プロセシングや分泌の程度を決定する因子を検討したところ,NGFやBDNFのプロペプチド(切断されて除かれる部分)の配列が大きく影響することや,細胞の分化状態が進むとともにNGFやBDNFはより調節的に分泌されるようになることを見出しました.さらに,NGFやBDNFの糖鎖や他の細胞内分子の影響などについても検討中です.

図. 左図:培養神経幹細胞の増殖と分化および胎仔脳内への物質投与イメージ;右図:末梢から脳に移行して神経栄養シグナルを発現または誘導する物質は疾患の予防や治療に役立つ可能性がある.
研究課題
  1. 神経幹細胞の分化制御機構の解明とその応用
  2. 神経栄養因子の細胞内プロセシングと分泌調節機構の解析
  3. 脊髄神経の再生をめざした開発的研究
  4. 神経栄養因子の産生を誘導する化合物の開発とその医学的応用
最近の研究成果
  1. Brain-derived neurotrophic factor participates in determination of neuronal laminar fate in the developing mouse cerebral cortex J Neurosci, 26, 13218-30 (2006).
  2. Pro-region of neurotrophins determines the processing efficiency Biochem Biophys Res Commun, 356, 919-24 (2007).
  3. Pyrroloquinoline quinone attenuates iNOS gene expression in the injured spinal cord Biochem Biophys Res Commun., 378, 308-12 (2009).
  4. Neurotrophin-3 stimulates neurogenetic proliferation via the extracellular signal-regulated kinase pathway J Neurosci Res, 87, 301-6 (2009).